偏屈オヤジでごめんなさい

好きな新聞はデイリースポーツ。好きな騎手は江田照。好きな季節は春夏秋冬で言うと五月。偏屈オヤジでごめんなさい。自覚はあるんですが、いまさら偏屈はなおせません。

火の粉(ビジネス書キライの小説読み)

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年末年始に読んだ小説の中で印象に残ったのが「火の粉(雫井修介)」。
文庫で550ページ超あったのですが、一気に読んでしまいました。

火の粉のあらすじ(さわりだけ)
小さな子も含む一家惨殺事件が発生。
遊びに来ていた隣人も襲われますが、背中に重傷を負ったものの命は助かります。

この隣人が犯人だ!
マスコミが騒ぎだし、警察も動きます。

そして、逮捕、自供。
ところが、裁判では犯行を否認。

動機が不十分なことと背中の傷が自分ではつけられないものだったことから裁判官は無罪判決を下します。

その2年後。
無罪判決を勝ち取った男が、すでに退官していた元裁判官の隣りに引っ越してきます。

隣りに引っ越してきたのは偶然か?
男が引っ越して来てから不可解な出来事も続きます。

一連の出来事も偶然なのか?
ホントにアイツは無罪で良かったのか…。

というストーリーです。

ミステリーとしても楽しめますが、梶間雪見の立場になってみると違った読み方もできます。

チームが間違った方向に向かっているときどうすべきか
ここで登場人物を整理しておきます。
梶間 勲  … 無罪判決を下した裁判官
梶間 尋恵 … 勲の妻
梶間 俊郎 … 勲の息子
梶間 雪見 … 俊郎の妻
梶間 まどか… 俊郎と雪見の娘
梶間 曜子 … 勲の母

この6人(四世代)が同じ家で暮らしており、その隣に無罪判決を勝ち取った男(武内真伍)が引っ越してきたというわけです。

一家の中で雪見だけが最初から武内に不信感を持っていました。
ただ、自分でも理由はわからない漠然とした不信感に過ぎません。

雪見以外の家族は武内に好意的。
家族の中で雪見だけが孤立していくこととなってしまいます。

あの男とは深くかかわらないほうが良い。
雪見がそう思っても、家族に上手く伝える術がありません。

理由を聞かれてハッキリと答えられるものがないのです。
雪見も漠然と不信感を持っているだけ。

ただ、その不信感がだんだんと濃くなり、確信に近くなってきます。
家族は間違ったほうに進んでいる。でも、誰も気づいていない。

しかも、自分だけが変人扱いされている。
この状況で雪見にできることはあるのでしょうか。

家族をチームや部署と置き換えて考えると、なかなか興味深いです。
自分のチーム(部署)が何やら間違った方向に進もうとしている

誰もそのことに気づいていない。
ただ、自分も何がどう間違っているのか上手く説明できない。

そんなときありませんか?
私も組織で仕事をしていたときに、似たような経験がありました。

あのときどうすべきだったのか?
雪見になってみると、味わい深い小説です。