朝日杯将棋オープン戦の準決勝「羽生竜王対藤井五段」のポイントを振り返ってみます。藤井五段はこの将棋に勝ち、続いて行われた決勝でんでも広瀬八段に勝利。
これにより六段に昇段しています。
五段時代がわずか16日のスピード昇段。
スゴイですね。
何がスゴイのか羽生竜王との公式戦初対局を素人なりに振り返ってみたいと思います。
後手羽生竜王の雁木
羽生竜王対藤井五段の公式戦初対局前に戦型を予想していたのですが、これがまさかの的中!競馬は当たらないのですが、こうゆうのだけ当たるんですよね。
戦型は見てみたいと思っていた「雁木」になりました。
振駒により先手となったのが藤井五段。
藤井五段は得意の角換わりを目指しましたが、後手番の羽生竜王は△4四歩と角道を止めて雁木に(第1図)。戦型予想の記事でも書きましたが、新時代の二人の対局にふさわしい戦型となりました。
先手番ということもあり、先に藤井五段が▲4五歩から仕掛けます(第2図)。
△同歩▲3三角成△同桂に2筋の歩を交換して▲2九飛。
△4四角打に▲7七角打△同角成▲同銀△7三桂としたところで、藤井五段が指したのが▲1七角打(第3図)。狙いは▲4四歩なので、羽生竜王は△4四角打。これに▲同角△同銀として雁木の金銀の連携を崩しておいたのがあとで利いてくるんですね。
藤井五段の先攻に対し、羽生竜王が反撃して迎えたところで出たのが▲4三歩(第4図)。この局面は直前に▲5五銀左△8八歩▲同金△5五銀としたところ。
▲5五銀と銀を取り返す前に指したのが▲4三歩です。終局後に羽生竜王が「▲4三歩のあとあたりからミスしてしまったのかも」と述べてました。
▲4三歩のあとは△4三同金左▲5五銀△9九銀。
2三飛成が見えているのに、3二の金で取ったのが△4三同金左。
藤井五段が▲5五銀と銀を取り返した手に、△9九銀が勝負手。
ただ、感想戦では△9九角のほうがまだアヤがあったかもとのことでした。
△9九銀は読みになかったのか、1分将棋となっていた藤井五段は「50秒、1,2,3…9」と「9」まで読まれてサッと金を9八に寄せて受けます。素人だと、何も考えず7八金と玉に寄せてしまいますが、プロは▲9八金なんですね。
このあと▲2三飛成と龍を作って藤井五段が寄せきりました。
一局を通して藤井五段にミスらしいミスがなかったというのが印象に残ります。振り駒で先手番が取れて主導権を握れたことが大きかったのかもしれませんが、それにしても見事な差し回し。相手は羽生竜王ですからね。
また、この2人はどこかで対局することになるでしょうから、そのときの羽生竜王のリベンジも楽しみです。